シャンガンの紐直し

石川県の金沢・口能登・加賀地区に多く見られる祭り棒振り獅子舞の時のかぶり物にシャンガンといった馬の尻尾で作られた祭り道具があります。以前は毛が痩せてくると加えるなどの修理もすることがありましたが、今では毛の部分や座部の部分の修理ができません。あご紐の修理については出来る場合は、他の紐をを利用して修理しています。

ちなみに明治維新の時の官軍の指揮官が同じような赤や白の被り物をしていますが、しゃん熊と言ってヤクの毛で作られていたそうです。馬の毛を利用するのは石川県だけでしょうか? 希少な作り物になっています。

全国で見られる「馬の毛」を使った祭り道具

石川県以外の地域でも、馬の毛(特に尻尾の毛)は古くから「神聖な毛」「威厳や霊力を表す材料」として祭礼具に利用されてきました。

采配(さいはい)や陣形道具、神具 武将が使った采配や、神社の祭礼で払いに使う「払子(ほっす)」などにも馬の尾毛が用いられてきました。

歌舞伎や日本舞踊の「毛振り(獅子物)」 『連獅子』などで使われる長くて白い(または赤い)頭髪の衣装には、馬の尻尾の毛(馬尾毛)が使われます。激しく振っても切れにくく、美しいしなりが出るためです。

各県の「獅子舞」や「鬼・天狗の頭髪」 富山県(越中獅子舞)や長野県、岩手県(鹿踊・鬼剣舞)などでも、獅子の髪の毛や、鬼・神役の毛髪(シャングマ・しゃんぐま)に馬毛を用いる例が多々あります。

「シャンガン」の修理と文化の継承について

加賀獅子や棒振りで使われるシャンガンは、棒振りが頭を振ったときに馬毛特有の「しなり」と「重量感」があるからこそ、あの躍動感ある演舞が生まれます。

しかし現在では:

  • 国内の馬毛(特に長くて良質な尻尾)の入手が極めて困難
  • 毛を植え付ける「座部(台座)」を編む職人や、毛を均一に仕立てる職人の減少

といった理由から、毛の増量や台座からの完全修繕ができる職人さんは全国的にも絶滅寸前となっており、人造繊維(化学繊維)で代用するケースも増えています。

地域の方々があご紐を工夫して付け替え、代々伝わる貴重な本物のシャンガンを大切に維持されている取り組みは、伝統文化を後世に残す上で非常に大きな意味を持っています。